ここからが面白い
私の看護師人生
地域密着型特別養護老人ホーム
万葉の郷
中途入職
看護師
佐藤 洋子 さん Yoko Sato
看護学校卒業後は総合病院のNICUへ
長年のクリニック勤務を経て
湖星会へ入職
従妹の看護師のお姉さんに憧れて、高校卒業後は地元の看護学校へ入学し看護師を目指しました。卒業後は総合病院の新生児の特定集中治療室(NICU)の病棟で勤務したのですが、結婚を機に退職し、しばらくは家業の酪農や農業を手伝いながら子育てをして過ごしました。そんな中、身内が近所でクリニックを開業することになり、そのクリニックで看護師として手伝い始め、子どもがある程度大きくなってからはフルで勤務していました。
平成18年に湖星会のみどりの郷が開設となり、私が勤めているクリニックの先生が、みどりの郷の嘱託医として月に数回施設に出向くことになり、私はそのクリニックの看護師として同行していたんです。しばらくして、クリニックの先生も80代となって年齢的にもご高齢でいらしたので、クリニックを閉院することが決まって。施設のご入居者様の健康状態もよく把握しているし、良かったら湖星会で看護師として働いてみない?とお声を掛けて頂いたのがきっかけでした。
湖星会に入職したのは私が59歳の時。あと1年で定年だわ・・・なんて思って、残り僅かの看護師生活を目いっぱい送ろうと思って入職したはずだったのに、気付いたらもう10年も経っちゃった(笑)あっという間ですよ。あの頃を思い返すと、何だかすごく懐かしい。あの頃は湖星会も、まだみどりの郷1つしか施設がなかったですからね。
「あなた、ここははじめて?」
「今お茶を用意するわね。」
お客様から、手厚い
お・も・て・な・し ?!
湖星会に入職してすぐは、特別養護老人ホームみどりの郷で勤務していたのですが、その後みどりの郷のサテライト施設の万葉の郷へ異動になりました。先ずはお客様にご挨拶しようと思い、カルテ片手に施設をまわりました。万葉の郷には同じ敷地内に別棟でデイサービスもあるんですが、そのデイサービスに行った時の話です。「こんにちは」と言ってフロアに入ると、70代後半位の女性のお客様がソファに腰かけていらした。私の方を見てにっこり微笑んで「こんにちは。あなた、ここははじめて?」と、お客様の方から声を掛けて頂きました。それで私も「そうなんです、今日が初めてなんです。わからない事いっぱいあるので、色々と教えて下さいね。宜しくお願いします。」とご挨拶をしたんです。
「どちらから来られたの?私は福島市からよ。あなたは?」そう仰るので私は「二本松市からです。」と言うと、お客様は急に慌ただしく
「ちょっと、お姉さん、こちらのお客様にお茶をご用意して。あと、お菓子もあったじゃない。それも一緒にお出しして。」と、ユニットの介護職員にお茶を用意するように一生懸命言うんですよ。「あ、私なら大丈夫でですから、どうぞお気遣いなく。」と言うものの、「いいじゃない、ゆっくりしていらして。」と。もしやこれは?と思いながら、いやいや、わたしの思い違いだろうと自分に言い聞かせ、しばらくお話していたんですけれど・・・。
私もそろそろ夕食時の服薬を準備しなければならないので医務室へ戻ろうとすると「もう少しいいじゃない。」と仰って私を引き留めるんです。もっと私と話をしていたいんだなと思うと、時間が許す限りお客様にお付き合いしいたいな、なんて思っていました。名残惜しいけれど、そろそろ医務室へ戻らなければならず「また遊びに来ますから。」と言って席を立とうとすると「ところで、あなたのお部屋はどこのお部屋?ここはね、みんな親切だから(介護職員へ)言えば部屋までちゃんと連れてってくれるわよ。ちょっとお姉さん、この方部屋に帰りたいみたい。」そう仰って、介護職員を私の元へ連れてきたんです。
もう、ユニットの職員も大笑いです。私も「きっと私の思い違いだわ。」そう自分に言い聞かせていたけれど、どうやら違ったみたい。
新しいデイサービスの利用者だと思われちゃったみたい、わたし(笑)。
10年も働いていれば、色々エピソードはあります。でも、そうやって、お客様と近い目線で接するのもいいのかな、って。
歳を重ねるほど仕事が面白くなる
看護師として、今
すごく充実しています
病院やクリニックの看護師時代と、介護施設での看護師との大きな違いは、やはり入居されている方の暮らしにとても近い位置で関わるという点でしょうか。
例えば、病院の看護師であれば専ら医療的なケアをひたすら勤務時間いっぱい対応して1日の仕事が終わる。病棟自体、そこは治療の場であって暮らしの場とはちょっと違うから当然なんだけど、来る日も来る日もそうやって、その中でほんの僅かな隙間時間に患者さんと会話したりして関わる。でも、介護施設は、看護師として医療的なケアはもちろん担うけれど、お客様と一緒に中庭に季節の花を植えたり、ホットプレートでおやつを作ってみんなで頬張ってみたり、車に乗って外出してみたり、日常生活の些細なことでお客様同士で口喧嘩が始まって、その仲裁に入ってみたり。
今、みどりの郷の中庭にはバラとか紫陽花とか色んな花が咲くでしょ? あれね、私がみどりの郷に居た頃に全部お客様と一緒に植えた花なの。最初にワーッと花が咲いた年は「咲いたよ、去年植えたの花咲いたよ!」ってね。みんな大喜びで、車椅子押して観に行ってみたり、記念撮影して写真をご家族に送ってみたり、フォトフレームに入れてお部屋に飾ってみたりしてね。その合間にバイタルチェックしたりカテーテールチェックしたり、お薬の管理をして。
そんな風に、日常の暮らしの中でお客様と一緒に過ごしながら健康面を支えたり、医療的なケアが必要な方をサポートしていくのが介護施設。事故を防ごうとするあまり、お客様の暮らしの中から僅かでもリスクがあるものを根こそぎ取り上げて行動を制限する方法で安全を確保するのではなくて、日常生活の中で危なそうと気付いたものは、予め危なくない様に環境を整えてあげて、見守りながら自由に暮らして頂くようにするの。
あとは、お付き合いが長いという点でしょうかね。ご入居された方の殆どは、最期の日まで施設で暮らします。日常の暮らしの中、慣れ親しんだ自分のお部屋の中で、ご家族や長年関わらせていただいた職員に囲まれながら旅立ちの時を迎えます。施設にご入居された日の事とか、あんなこともあったな、こんなこともあったなと、ここでお過ごしいただいた日々を想いながら、沢山の笑顔と色んな思い出を下さったお客様に「ありがとう」という感謝の気持ちの中でエンゼルケアをするんです。私たちは、お客様の人生の集大成の時期に一番近くに居て、生きることを支え、そしてお客様が幸せな死を迎えられるように「死」も支える。誰にでも訪れる死と向き合って、いかに幸せな死を迎えるか、それって、どう生きるかっていう事でもある。一日一日をどう生きるか。沢山の笑顔に出会いながら、お客様のいのちと向き合いながら、毎日一緒に生きています。
今、万葉の郷の職員の中では多分私が最年長で、お客様に一番歳が近い(笑)。そんなこともあってか、お客様は色々と私に心を打ち明けて下さったりすることもあるんです。ご家族もそうですね。一人の人間として、お客様の気持ちが理解できることも色々あって。私もこの年になったから理解できるんであって、若い頃では多分気付けなかったし、理解も難しかったと思うんですね。もっと若いうちにそれに気付けていればもっと色んなこと出来たな・・・なんて、ぼんやりと思ったりもしますが、それは無理。だって、今だからわかるんですもの(笑)。
定年で仕事を終わっていたら、その境地まで私が到達しなかっただろうし。仕事続けていて良かったな、って思います。今だからわかること、今だからできることがあって、それを看護師として仕事を通じて実現できるってことは、本当に幸せなことだと思います。看護師として、本当に、ここからが面白いんじゃないかなって思います。
目標は、80歳まで現役で活躍した
湖星会の先輩ナースの記録更新?!
今の湖星会の中だと、私よりも先輩は・・・看護師のT子さん、介護だとY子先輩が私よりも年上ですね。万葉の郷の先輩看護師は、もう退職されてますけど80歳まで働いて退職された方もいらっしゃった。デイサービスのお客様が自分の小学校の頃の後輩とかで「あの頃はこのあたりは田んぼだったから」とか、それこそ70年前当時のこの街の話題で盛り上がっていた。素敵よね。だから私も、先輩を見習って日々頑張っています。
湖星会に入って一番良かったこと、それは沢山の笑顔に出会えたことと、何よりも私の足腰が鍛えられたこと!随分歩けるようになりましたよ(笑)。 お休みの日は、沖縄、九州、佐渡、北海道、全国津々浦々、お友達と色々なところに旅行へ行きます。旅先でこんなに歩けるのも、万葉の郷とかみどりの郷で足腰を鍛えて頂いたおかげです。
二十歳過ぎの頃から、看護師として本当に色々と経験させて頂き、沢山の方にも出会い、私自身も歳を重ね、この歳になってようやく内面的に成熟してきたかな・・・って頃に、体力が追い付かないなんて、もったいないじゃない。体力が続く限り、今の仕事を頑張りたいと思っています。
最期までチャレンジし続けることにチャレンジしたい
1日も長く、口から食べて欲しい
最近、咀嚼嚥下に関する研修を受講したんですけれど、新たな発見が色々あって、とても勉強になりました。いつもは、身近なところでだけ見たり聞いたりという程度だけど、こうしてきちんと研修に参加すると、世界が広がる感じがあります。自分自身の意識を高められただけでも参加する意義はあると思いますけど、私が今勉強している咀嚼嚥下に関しては、本当にやればやるほど面白い。
今、万葉の郷に行けば食事を摂るのが難しいお客様も何名かいらっしゃって、どうやったら誤嚥を防ぎながら口から食べ物を入れられるか、色々と試行錯誤を重ねたけれどなかなか上手くいかずで。長期入所のお客様で、パーキンソン病を患っている方がいらっしゃるんですけど、水分を5cc飲むのに20分かかったの。水のみでもだめ、スプーンでもだめ、注射器を試してもだめ。ある日、その方に口腔ケアを施している時、スポンジの水を吸ったんです。もしやと思い、高カロリー補水液をスポンジに含ませ口に入れたら、吸ったの! 湯飲み茶わんを下唇に当てたら、それも吸った。
「あー、吸った」って(笑)。 それはもう、嬉しかったわよ。1日も長く口から摂取して欲しいから、これからもっともっと勉強したい。可能性が僅かでも残されているなら、最期まで諦めないでチャレンジしたい続けたいです。
湖星会での就業を
検討されている方へ
病院とは違うという点で不安をお持ちかも知れませんが、一緒にシフトに入りながら仕事に慣れて頂ける環境がありますので心配は要りません。お客様の命を守るという仕事ですから当然厳しさもありますが、その根底には優しさと温かさがあっての厳しさです。看護職もみんなで知恵を出し合っていいものを追求しようとする雰囲気があります。
施設で働く職員みんなでチームとなって、お客様の笑顔と幸福を一緒に共有すると、あなたのここでのやりがいや目標がきっと見つかると思います。命の尊さを感じながら働ける職場って、いいですよ。お待ちしてます。
Profile
卒業後は総合病院の新生児の特定集中治療室(NICU)の病棟勤務を経て結婚を機に退職し、家業の酪農や農業を手伝いながら子育てに専念する。その後、親戚が開業するクリニックを看護師として手伝い始め、子育てが一段落すると本格的にフルタイムで看護師として活躍。みどりの郷の協力医療機関の看護師として、長きに渡りみどりの郷のお客様の健康を支え続けた。
その後、クリニックの閉院を機に湖星会へ入職。今度は湖星会の職員として、引き続きみどりの郷のお客様に寄り添い続ける。平成29年より、地域密着型特別養護老人ホーム万葉の郷へ異動し、豊富なキャリアを生かして看護師として活躍中。趣味は旅行。全国津々浦々、友人とグルメや観光を楽しむことが若さの秘訣とか。目標は、体力が続く限り看護師として人のお役に立つこと。