先輩の活躍

新規施設の立ち上げから
看取りの経験まで
人生最高に濃かった
私のこの3年間

特別養護老人ホーム
ラスール金沢文庫

平成28年4月 新卒入職

管理栄養士

加藤 光莉 さん Hikari Kato

給食が大好きで
管理栄養士の道へ

私の出身は長野県松本市の小さな町で、人口も少なく、私が子どもの頃は小中学生合わせて100名程度の学校に通っていました。小学生も中学生も同じ校舎でしたので、9年間そこに通いました。学校での一番の楽しみは、何と言っても給食。給食は校舎内にある給食室で一から作っていて、毎日出来立てあつあつの美味しい給食が提供されていました。

公立の学校なんですが、食育の授業もあったりして、今振り返れば「食」にはかなり力を入れていた学校だったと思います。
毎日献立表を見ては、給食の時間が楽しみで楽しみで仕方なかった。給食好きが高じて保健給食委員のメンバーにもなり、給食委員長も務めました。先生と一緒に給食に関するアンケートを実施したり、月間キャンペーンやバイキング給食を企画・実施したり、委員会活動の一つひとつがすごく楽しくて。私の子どもの頃の思い出は?と聞かれれば、迷いなく「給食」と答えます(笑)。

給食の無い高校生活を送っている間も小中学校時代の給食を懐かしんだりして、私の給食への愛は膨らむばかり。これから先、私の人生の中で給食を食べる事はもうないんだろうなと思うと、何だかとっても寂しい気持ちになりました。いざ給食から離れると、これまで以上に給食に思いを寄せる時間が増えていて。献立表を見ながらその日の給食を想像する楽しみも、保健給食委員会で活動した日々も、すべてはもう過去のこと。気持ちを切り替えて前に進まなければと思いました。自分の気持ちを傾けられる給食以外の何かを見つけようと模索していました。

3年生になっていよいよ進路を決める時期になった時、大学へ進学したい気持ちはあったのですがどの分野に進もうか悩んでいた時のこと、「光莉は給食が大好きなんだから、管理栄養士を目指して給食関連の仕事をやってみたら?」と母から素晴らしい提案がありました。人生の中で、もう二度と給食に関わることは無いだろうと思っていた私にとって、こんな妙案はありません。

大好きだった給食に携われる事、給食を通じて人をワクワクさせる様な仕事に就ける事は私にとって本当に魅力的でした。私は本気で、給食に携わる仕事をしようと決意しました。管理栄養士の資格を取得できる大学へ進学しようと思い、大学のホームページをチェックしたり、気になる学校の資料を取り寄せたりして、早速学校選びを開始しました。
色んな情報を収集した中でも特に目を引いたのは、文教大学の管理栄養学科でした。管理栄養学科の中に栄養教諭、健康栄養、臨床栄養と3つのコースがあり、自分が目指したい職業をより意識して、3年からは専門に特化したカリキュラムで授業が受けられるという点は、他の大学には無かった魅力でした。目指したいものがはっきりしていた私は、文教大学の臨床栄養コースが一番自分に合っていると思い、文教大学へ進学しました。

私がやりたいこと、ここでならやれる!
チャレンジできる環境が湖星会にはあった

大学の授業で臨床栄養を学ぶ中で、学校給食以外にも病院や介護施設での管理栄養士の仕事を知りました。どちらもそれぞれ興味があったので、できれば実習で両方の施設に行ければ良かったのですが、私は病院と工場の社員食堂が実習先となりました。でも、どちらも私が希望する集団給食での実習だったので、実習をとても楽しみにしていました。

実際に2つの施設で実習しましたが、それぞれに仕事の特色があって、同じ栄養士の仕事で、同じ集団給食でもこんなに違うものなんだ…というのが一番の感想です。例えば、病院の食事は治療の一環なので、一番優先すべきことは数値。食事を楽しむこと以上に、数値を管理して結果を出していく事が何よりも求められます。一方、社員食堂の方は、ある程度決まったサイクルメニューで食事を提供していくため、栄養管理に関する仕事はあまりなく、工場で働く方にとって満足度の高い食事を予算内で滞りなく提供することが求められました。同じ集団給食の栄養士と一言に言っても、その施設によって求められること、やることが大分変わってくる。実際にやってみないと見えない部分が沢山見えて、やってみたから分かったことが色々とありました。
実習の経験は、とても貴重です。

4年生になってからは、キャリアセンター前の学内掲示板に貼り出されている求人票はマメにチェックしました。栄養士の求人は、委託業者の求人が圧倒的に多く、そんな中で、直営で厨房を運営している法人の求人を見つけました。新しくオープンする特別養護老人ホームでの栄養士求人で、これこそが湖星会の求人です。前々から介護施設での栄養士には興味を持っていたので是非話を聞いてみたいと思い、早速就職説明会に申し込んで参加しました。

湖星会では、通常は施設見学を兼ねた説明会を実施している様でしたが、ラスール金沢文庫は新しくできる施設でまだ建設中だったので、湖星会の他の施設での日常の暮らしの様子がわかる映像や写真を沢山用意して見せて下さいました。
湖星会が運営している施設の多くは広域型の特別養護老人ホームでどの施設も大きな建物ですが、暮らしの空間はその外観のイメージとはまた違って、温かい家庭的な雰囲気に溢れていて、お家っぽい感じがしました。施設に入っているという感じではなくて、自宅に住んでいる、家で暮らしているという感じです。

もっと施設っぽいものをイメージしていたので、いい意味で意外でした。入居されている方たちはみんなそれぞれ好きなことをしながら、思いのまま自由に暮らしている様子が伝わってきて、ユニットの中が本当にその方のご自宅という感じがしました。この穏やかで平和な暮らしの中に、小さな幸せが沢山詰まっている、そんな印象でした。
湖星会が取り組むんでいるユニットケアや個別ケアに関する説明では、一人ひとりが自分らしい暮らしを継続するために、様々な専門職でチームを結成し、あらゆる角度からサポートしている、そのサポートがあってこそ、この様なお客様が主役の家っぽい暮らしが24時間365日維持できている、というお話がありました。
私も管理栄養士の立場から、お客様のこの幸せな暮らしを支えてみたい!と思いました。

説明会では、お客様の日常の暮らしや取り組んでいるケアについてのお話がいくつかあったのですが、中でも印象的だったのは、お誕生日のお祝いは、同じ誕生月の方をまとめてお祝いするのではなくて、その方のバースデーにその方のためだけのお祝いをしたり、朝の起床時間も朝食の時間も、その方のペースに合わせて時間がバラバラでもOKだったり、朝はパン派!という方には、献立に関係なく個別でパン食に対応したり、その方に合わせたとても丁寧なケアを実践しているという点です。

それでいて、何でもやって差し上げる訳でもなくて、あくまでも助けが必要な部分をサポートして、入居されている方一人ひとりが自分の意思で、自分らしく暮らしている様子で、皆さんとても生き生きとしていました。
お誕生日会、毎月の季節行事、施設イベント、レクリエーションの様子を写した画像には、そこに暮らすお年寄りの方たちと、働く職員さん方の笑顔が沢山ありました。そして、人の笑顔のあるところに、いつも「食」があった。私は人を笑顔に導いてくれる「食」の力をあらためて感じました。

湖星会の説明会に参加して、映像を観たりお話を聞いているうちに、私が子どもの頃、給食が大好きだった頃の気持ちが鮮明に蘇ってきました。ここでは、病院の様に細かい制限の中で治療のための食事を提供するのとは違い、栄養管理がありながらも一番は日常生活の中で食を楽しむこと、1日も長く人生最期の日まで美味しく食べて頂くことを大切にしていた。先輩方の活躍ぶりが紹介される映像の中には、栄養課が中心になって施設の中にカフェやベーカリー、ミニ商店を設けて小さな「街」を創った様子や、そこで入居されているお客様が面会に来たお孫さんにお菓子やアイスをとっても嬉しそうに買い与えたりしている様子などもありました。先輩たちの様に、私も自分のアイディアで色々なチャレンジがしてみたい、ここにはそんなチャンスが溢れていて、私がやりたいことも、ここでならきっとやれる!と、迷わず第一希望の就職先として決めました。

新規施設の立ち上げ
チャレンジする機会と
失敗する権利を与えてくれた湖星会

湖星会に4月に入職して、入職式、新入職員研修、湖山グループの合同入職式、ラスール金沢文庫のオープニングセレモニーや内覧会などで、あっという間に1カ月間が過ぎました。そして翌月5月にはラスール金沢文庫がオープンし、お客様のお引越しが開始しました。厨房内には、食形態別の食数や個別の禁忌情報など、食事提供に関する基本情報や申し送り事項などが書かれている大きなホワイトボードがあるのですが、その内容は毎日変化していました。お客様のご入居のお引越しは毎日数名ずつスケジュールが組まれるのですが、公休が連休の時は休み明けに出勤すると入居者数が10名以上増えていたりすることもありました(笑)。
この様な日々の変化に追われながらも、沢山のお客様をお迎えすることがとても嬉しくて、ひたすら黙々と毎日の業務に取り組んでいた気がします。199室ある長期入所の個室は、スケジュール通り2か月余りで満室になりました。

ベテランの管理栄養士の方や経験豊富な調理師の方も沢山いらっしゃいましたが、新規の立ち上げとか食数の多さという意味ではここでの経験が初めてになる方も多く、更に栄養課の半数以上は新卒で入ってきているので、厨房内ではみんながフラットに、それぞれが意見を出し合いながら、最初の頃は手探りで仕事をしている部分も多々ありました。
湖星会自体はこれまでいくつもの施設の開設を経験してきていますが、219床という規模の特養の開設はラスール金沢文庫が初めてでしたので、湖星会の諸先輩方から受け継げるものと、自分達で築いていかなければならないものとがありました。ですから、オープン間もない頃は、まずはやってみる、そして失敗するという事がいくつもありました。

例えば、ラスール金沢文庫は長期入所のお客様だけで約50名の方はソフト食なんですが、栄養課ではできるだけ手作りして美味しいソフト食を提供しようと力を入れていました。でも、50食分を作るのにベストな分量や時間を掴むまでの間は、うまく固まらなくて型抜きできなかったり、硬くなりすぎたりして、作り直すと出来上がりが配膳の時間に間に合わなかった事も何度かありました。ソフト食って、本当に難しいんです。
ミキサーする食材の種類によって、固まるまでに必要な時間もゲル化剤の量も違うし、型抜きを想定して少し硬めに仕上げてしまうと、ペーストに近いソフト食のお客様の咀嚼力では食べられない硬さになってしまう。出来上がっている市販のソフト食も沢山あるんですけど、市販で出ていない食材もまだまだあるので、すべての食形態のお客様みんなに美味しいお食事をお届けしたい、その一心で私たちは諦めず、何度も何度もテストしてソフト食を作り続けました。
そうやって続ける中で、一つひとつの失敗や成功のデータがここに蓄積されていき、今となっては約50食分のソフト食はかなり完成度の高い仕上がりになってきました。

またある時は、食材発注にミスが生じたり、配膳時にミスが生じたりすることも度々ありました。今はどちらも、チェック表を作成して運用したり、栄養士がダブルチェックするなどしてそれらのミスは防げていますが、最初の頃は、本当に今では考えられないようなアナログなミスが結構あったんです。

こういう経験を栄養課としてさせてもらえたのも、新規の立ち上げだったからだと思います。出来上がったルーティン業務をマニュアルに従って運営していくのと違い、何のサンプルもなくて、真新しいゼロ地点から、みんなでアイディアを寄せ集めてみんなで意見を出し合って、この施設のやり方を一つ一つ創っていく。ゼロから一へ、一から二へ。手探りでトライして、失敗してはみんなで落ち込んで、またトライして、やっと成功にたどり着いてみんなで大喜びして。こんなことを繰り返しながら、219床の規模を誇るラスール金沢文庫としてのスタイルがだんだんと確立されてきて、今があるのだと思います。
「ああ、こうやって、礎は築かれていくんだな」と、沢山の経験を通じて本当に多くのことを学ばせて頂きました。
ここに居るオープニングメンバーは、皆さん 「失敗の仕方」を知っている。どうすると失敗するのか、失敗したらどうしたらいいのかということを。そして、失敗を繰り返した先にある成功の喜びも知っている方たちです。
成功も失敗も、どちらも経験した者だからこそ知り得た部分は結構あると思うんです。

先輩たちからの教えでだけで認識することと、実際に自らの体験を通じて学ぶことの違いは大きい。僅か数年の間にこれだけの経験ができたのは、やはり新規の立ち上げ期に関われたからだと思います。私は本当にラッキーでした。そして何より、湖星会は私たちオープニングメンバーに、チャレンジする機会と失敗する権利を与えてくれた。その事に、私はとても感謝しています。

施設が開設してから丸3年が経ち、これまでの経験の蓄積からマニュアルも残せる様にもなりました。だからかつて私たちが経験した様な大失敗は、マニュアルが出来た今となっては、起こせと言われてもそう簡単には起こせないですね(笑)。
他にも、大きな声では言えませんが色々とありました(笑)。どれもここ2~3年間の出来事なのに、今思い返すと、すごく懐かしい。ここがオープンしてから、そうやってみんなでずっと走ってきたんですよね。
大変だったけど、本当に楽しかった。大変さをはるかに超える楽しさがありました。

最期まで寄り添い、看届ける
終の棲家の管理栄養士の仕事

ラスール金沢文庫では、最期の日までここでお過ごしになることを望む方が年々増えております。ご家族様が、お客様ご本人のかねてからの希望を尊重して、自然の流れを超えた延命を望まれない事がその最たる理由です。最期まで自分らしく生きて、ここで天寿を全うして欲しいと願われます。私は、お客様とご家族様のその思いに、管理栄養士として寄り添い、応えていきたい。

個人差はあるものの、最期は殆どの方は食事をあまり召し上がらなくなってきて、食事の量も回数も減り、いずれ水分も摂ろうとしなくなります。身体が摂取したものを処理することが段々出来なくなってきているからです。その状態を把握しないで、食べさせよう、食べさせようと働きかけることは、お客様にとって大きな苦痛を与えるだけでなく、健康面から考えても身体に大きな負担を強いてしまうことになりかねません。

身体は食事を受け入れられる状態だけど食欲が落ちているだけなのか、或いは食事の摂取量や回数を下げた方がご本人の身体のコンディションは上がるのか、多職種と密に連携を取りながらお客様の健康状態をよく把握して、お客様に合わせた食事を提供することを常に意識しています。
以前、看取りの段階に入ったと診断を受けて間もないお客様の顔を見に行った時に「お食事どうですか?」と声を掛けたら「食べたくない」と仰いました。お元気な頃は甘いものが大好きでよく召し上がっていたので「甘いものはどうです?」と聞くと「少しなら」と仰るので、私は早速甘いものを用意して、それを介護スタッフに託しました。
翌日、またお客様のもとを訪ねると、担当の介護スタッフから「あの甘いの、夕べ全部召し上がったわよ」と報告がありました。
驚きました。普段の食事はほぼ一切食べれていなかった方なのですが、甘いものを用意したら全部召し上がった。
「美味しい、美味しい」って、一度にすべて召し上がったそうです。本当に驚きました。
当然個人差はあると思いますが、このタイミグなら、好きなものであれば食べられる可能性は高い。
お客様が食べられるうちに、お好きなものを提供したり、お客様にとっての懐かしい味を提供したり、ご家族や好きな方たちと一緒に食卓を囲み団らんして思い出をつくるお手伝いをしたり、そういったことをしっかりとやっていきたいんです。医師から「あと数日」と言われたタイミングで、食べられなくなったお客様に慌てて大好物を用意して並べてみたところで、それではもう遅い。お客様が食べられなくなってからでは、管理栄養士にできることは本当に限られてきてしまうのが現実です。

お客様が旅立たれた後、施設内で必ず行うカンファレンスの時に「どうでしたか?後悔のない看取りができましたか?」といつもケアマネさんから、全ての部署の担当者が同じように聞かれます。私は管理栄養士として一体どれだけの事が出来たのだろう…と振り返っては、もっとできたはずなのに、もっとやっていれば良かったのにと、いつも後悔が残ります。今まで後悔が残らなかった看取りは一度もありません。
お客様がお元気な頃から関わって、もっと普段からこまめに顔を見に行っていたら、何か小さな変化に気付いていたかも知れない。お客様を普段からよく知っていれば、意思疎通が難しい状況になったとしても、何か提案できることがあったかも知れない。食欲が減退し始めた直後位であれば、もっと食べられるものがあったのかも知れないと、モニタリングの重要性を痛感しながら、そんな事をいつも思います。

「後悔の無い看取り」への取組みは
ご入居されたその日からの始まっている

「後悔のない看取り」「いい看取り」
その答えを私はいつも模索していました。
お客様が「もういらない、食べたくない」という状態になってから、自分は管理栄養士として何をしてあげられたのだろう・・・どれだけの事ができたのだろう・・・。それを考え始めると、看取りの段階に入るずっと前から、もっと食べられるうちにあれも提供したかった、これもやっておけば良かった、そんな後悔が自分の中にはありました。

思い返すとつい笑みがこぼれてしまうような素敵な思い出づくりを沢山したり、もう一度あれがやりたい、またこれが食べたいという生きる意欲が湧いてくるようなサービスや食事を提供することで、お客様の生きる時間にどれだけの輝きをもたらすことができたか、お客様がラスール金沢文庫での暮らしを心豊かに過ごせたかどうか、それが後悔のない看取り、いい看取りに繋がってくるのではないかと思うようになりました。
そう考えると、ラスール金沢文庫に入居されたその日からの一日一日は、お客様にとっても私たちにとっても、いかに尊い時間であるかということを改めて気付かされます。

先日、栄養課で「パフェレク」を実施しました。栄養課スタッフがユニットに出向いて、和風パフェ、洋風パフェのどちらかを選んで頂き、ライブキッチンスタイルでお客様の目の前でパフェを作って提供するレクです。
パフェ用のカップにソースをひいて、ゼリーを入れて、アイスを盛って…お客様は興味深そうにパフェを作る過程をじっと見つめていました。段々パフェらしい形になってくるとお客様の眼差しはみるみる輝き出して、トッピングを一つ盛る度にユニットのあちらこちらから歓声が沸き起こったり、笑い声が聞こえてきました。

「うわーすごい。まだ載せちゃうの?もっと載せちゃうの?これ私が食べるの?」

「もっとクリームいっぱいにしてちょうだい!フルーツなくていいから、もっとクリーム!」

一つひとつお客様のリクエストに応えながら手作りのパフェを提供すると、お客様は皆さん黙々と召し上がり、あっという間に完食されました。
普段は食が細い方も「ねえ、これっておかわりできるの?」と想像以上に召し上がり、パフェレクは大好評でした。
パフェレクを実施した次の日、昼食の配膳でユニットに出向くと、一人のお客様が「ねえー、ちょっといい?」と、私の方に歩み寄って来られました。

「昨日のパフェ、あれ楽しかったわ。また食べたい。次はいつやるの?」と、次回開催の催促がありました。

すごく嬉しかったですね。お客様の心が躍るような楽しみが、また一つ増えた!と。
日常の暮らしの中の、小さなレクリエーションの一つに過ぎないパフェレク。でも、こういった日々の小さな取り組みの中に、お客様の楽しみや喜びがあるという事をお客様は私に気付かせて下さいました。私がずっと模索していた答えが、ここに見えた気がしました。
私はこの小さな取り組み一つひとつを大切に積み重ねていきたいと強く思いました。

人生の最期、もう食べることも飲むこともしなくなった時に「ああ、あの時は楽しかったなぁ。」と思い返せる素敵な思い出がお客様に1つでもあって欲しい。「最期まで楽しかった。」「幸せだった。」「いい人生だった。」と我が人生に満足し、心が満たされて、人の優しさや温もりや愛に包まれながら安らかな気持ちで旅立つことができたら、それはきっと「いい看取り」と言えるのではないか…。最近そんな風に考えるようになりました。

管理栄養士である私は、これまでお客様の幸せを考える際に、食べてもらうことに固執しすぎていたのかも知れません。
人間が心豊かに輝いた人生を歩む中で、満たされるべきものは「胃」だけじゃないという事ですよね(笑)。
身体の栄養さえ摂取していればいい訳じゃなくて、感動とか、喜びとか、心の栄養もしっかり摂取できてこそ、幸福な人生はあるのだということを私は学びました。ラスール金沢文庫の管理栄養士として、ここで関わってきたすべての方からそのことを学びました。
だから、お客様の健康と命を維持するための管理栄養士の役割だけじゃなくて、食を通じて喜びとか感動とか思いを届けられる、心の栄養もしっかり補給できるような管理栄養士になることが、今の私の大きな目標です。

応募を検討している学生の皆さんへ

湖星会の魅力は、何と言っても直営厨房なので、やりたいことはすぐに形にできるという点です。委託の栄養士との最大の違いは、施設栄養士から入ってきたオーダーに応えていくのではなく、自分がお客様の顔を直接見に行き、対話し、お客様の様子を見ながら、自分でプランして実行する。そしてまたお客様の様子を直接見に行き、その成果を自分の目で確認することができます。言わば、栄養ケア・マネジメントから献立作成、調理、提供、評価までの一連の流れすべてに携わる事ができて、お客様お一人おひとりとじっくりと向き合う事ができるという点です。

また、ラスール金沢文庫は地域開放のビッグイベントの開催や地域交流、国際交流にとても積極的な施設ですので、日本の食文化を海外からのゲストに伝えたり、在宅で介護をされている方に家庭でも簡単に作れる「介護食」を伝えたりする機会もあって、管理栄養士としての活躍の場にどんどん広がりを持たせてくれるところです。

自分の中でやりたいビジョンをお持ちの方は、とてもいい環境だと思います。献立作成も、自分でいいと思うメニューをどんどん取り入れられるし、栄養課が食レクを主催することもあります。お客様のお誕生日会の時には、お誕生日を迎えた主役のお客様の大好物メニューで食事を提供をしたり、バースデーケーキやパフェタワーで会を盛り立てます。現場ユニットの介護スタッフの方たちと協力しながらお客様に幸せをお届けできる喜びは、言葉では説明しきれない感動があります。幸せをお届けしたつもりが、実は私たちの方が幸せと感動を頂いている。そんな素晴らしい仕事だと思います。
是非、施設見学にお越し下さい。インターンの参加も大歓迎です。
皆様のお越しをお待ちしております!

管理栄養士・栄養士の先輩インタビュー